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| HOME | 2007.10.22 Mon黒川紀章という名ドン・キホーテ
建築家の黒川紀章が亡くなった。東京都知事選からの黒川氏はまるでドン・キホーテのように道化師を演じていた。
彼の死因は心不全だから、単純に言うと心臓が止まったという診断だ。(昨年も入院していたとのことだから)他の病気が悪化して、心臓停止ということに至ったのだろうと推測する。ただ心不全の引き金となった病気は公表されていない。
この夏の参議院選挙での黒川氏の痩せ方は酷かった。何らかの病気を患っていると思ったのだが、参議院選挙の出馬するくらいなのだから、きっと快方に向かっているに違いないと勝手に想像していた。
世界を舞台にして活躍する建築がなぜ、当選もできないような知事選や参議院選に立候補するのか、疑問に思った人は多いに違いない。 私もそのうちの一人だ。 選挙には莫大な金がかかる。有名になりたいために立候補する泡沫候補が多いため、立候補には供託金を支払う必要がある。もしも得票率が低ければ供託金は没収となる。黒川氏も東京選挙区と比例区を合わせると1千万円近い金額を没収されたに違いない。 その他にも、独特の発言やパフォーマンスでテレビのワイドショーを賑わさせた。ガラス張りの選挙カー、モータボート、意味不明の発言など、話題に事欠かなかった。金持ちの酔狂に付き合っていられない思ったのだが、参議院選では妻若尾文子まで引っ張り出す気の入れようだった。 まるでドン・キホーテのように妄想に陥った騎士が、選挙を舞台にいもしない巨人に向かって剣を振りかざしているようだった。ついに若尾文子までが従者サンチョ・パンサになってしまったのだ。 しかし、黒川紀章は別にドン・キホーテになってしまった訳ではなかった。自らの余命が少ないと感じ、死の淵に片足をかけた状態で自らドン・キホーテを演じて、世の中を風刺して見せた。そして、世の中だけではなく自らの人生をも笑い飛ばして見せたのだ。 建築界の権威となり、有り余るほどの金を手に入れた。彼はそれでも満足できなかった。 彼は自らの権威を地に貶めることで、日本中で椅子にふんぞり返っている権威者をあざ笑ったのではないか。きっと死を前にし、人生の意味を問うたのだ。親交の深かった石原慎太郎を批判したのも、石原氏があまりにも傲慢になり、権威者になってしまったからだ。 石原氏は黒川紀章の選挙戦を見ていて苦笑していた。きっと石原氏も黒川氏が何を考えていたのか分かっていたのだろう。 妻の若尾文子は黒川紀章の人生最後の舞台で、従者サンチョ・パンサを演じた。それが彼に対する最高の愛情表現だった。プライドを捨てて、ガラス張りの選挙カーに乗った。市民はドン・キホーテとサンチョ・パンサのお出ましを見て笑った。しかし、黒川氏は本気でドン・キホーテを演じた。まったく手抜きはなかった。テレビのキテレツな発言も、世間を煙に巻くには上々だった。 黒川紀章は自ら建築界での権威者となり、最後に自分の権威をぶっ潰してあの世に旅だった。なんと痛快な人生だろう。 黒川氏は最期に「本当に好きだったんだから」と妻若尾文子に言った。妻には似合わないサンチョ・パンサ役を自分に付き合って演じてくれた妻への感謝だ。 日本は黒川紀章という希有な人材を失った。
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